ものがたり『バガヴァッド・ギーター』第6話
弓の名手アルジュナはつづけて言いました。
「(友の)クリシュナよ。
私たちの領土を侵略しようとした
彼らを殺したのなら、
殺生のけがれはわたしたちにかかります。
ゆえにわたしの従兄弟である
ドリタラーシュトラの息子たち
やその親近者を殺して、
どうして幸福になれるというのですか?
彼らが貧欲さに心を奪われしまったとはいえ、
一族を全滅させ、
親しい友人同志が殺し合うほどの
罪をおかしたとは思えません。
そのことを知りながら、
私たちは、なぜ、
この地で戦争をしなければならないのですか?
一つの王朝が滅亡するなら、
一族に代々と受け継がられてきた
家訓や規範が失われて、
残された家族には迷いが生じます。
クリシュナよ。
一家が信じるものを失えば、
女性たちはだらしなくなり、
その結果、
望ましくない子孫をもたらすでしょう。
望ましくない子孫が増えたならば、
家族も家庭を壊してしまったものも
両方、地獄の苦しみを味わいます。
祖先も、
お供えものの水をや食べものを受けられず、
大切にされなくなるでしょう。
王朝を破壊者するものの悪いおこないが、
望ましくない子孫を増やし、
社会的な立場におけるすべての義務も、
家の伝統を維持する活動も、
みじめに踏み荒らされてしまことでしょう。
家の伝統を破壊したものたちは、
地獄に落ち、とてもながい間、苦しむことになると、
私は立派な人びとから聞いています。
ああ、私たちは今、
何という大罪を 犯そうとしているのか!
王候の栄華を欲するあまり、
血縁の人々を互いに殺そうとしているのです。
たとえ従兄弟のドリタラーシュトラの息子たちが、
武器を持たず無抵抗の私を殺したとしても、
その方が、ずっと吉兆なことのように 私には思えるのです。」
アルジュナはこのように言うと、
悲しみに打ちひしがれて、
戦場の中央で、
武器の弓矢を投げ捨てて、
戦車の床に坐りこんでしまいました。
…続きはまた明日。
(今日は1章37-46節まででした)
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